正欲 朝井リョウ
彼氏彼女と言わずに大切な人と呼んでいるなどという小手先の言葉選びによる多様性の尊重が礼賛される時代に、氾濫させられない叫びを噛み砕きながらどうにか割り切っていくしかないのだろうか
自分が想像し得なかった世界を否定せず、干渉せず、隣同士、ただ共に在るということ
ありのままの自分を誰かにわかってもらおうとする必要のないまま、生きていられること
どんなものを持ち合わせて生まれてきたとしても、自分はこの星で生きていていいんだと思いたい。
“多様性の時代”にさえ、通り過ぎる街のすべてに背を向けられてしまう全員。
社会の正義から外れてしまった人がその後どう生きていくのか、そちらにもっと目を向けてもいいんじゃないかと思うんです。
全然想像できない欲求と生きてる人のこと、もっと考えるべきだと思ったんです。
なんか人間って、ずっとセックスの話してるよね。
それはきっと、誰にも本当の正解がわからないからだ。
正解の中にいるって、怖いんだ。
自分を削ってくるものだらけの世の中で。
多様性ってもっともっと、苦しい。